近年、在宅での最期を望む方が増えていて、この先それが広がりをみせる可能性もあります。
そこで気になるのが、自宅で誰かが亡くなった場合にそれが事故物件となるのかどうかといった点です。
今回は、在宅看取りが起きた物件は事故物件として売却するのか、告知義務が必要だと判断されるケースや、物件への影響について解説します。
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在宅看取りとは、終末期と判断された病人に対し、精神的・身体的な苦痛を伴う延命治療をせず、さらに医療機関や介護施設ではなく自宅でその最期を見届けることをいい、近年は平穏死や尊厳死といった考えが少しずつ広がってきています。
それを裏付けるものとして、自宅での最期を希望している方は約7割にものぼるデータがあり、在宅での看取りは今後増えていくと考えて良いでしょう。
しかし、この在宅看取りには問題があり、本人と家族の意思とが同じである必要があるうえ、在宅医療ができる医療体制が整っている病院もまだ少ないのが現状です。
このように意外と困難な状況にある在宅での看取りですが、もしそれが可能となった場合でも、その後に訪れる現実は家族にとって予想外のものかもしれません。
在宅看取りをしてその家の所有者がいなくなった場合、一般的にその家は売却されますが、このとき買主が現れないといった事態もあり得るのです。
買主としては、他人である誰かがその家で亡くなったのは事実であるため、心理的に嫌な気分になるのは仕方がないわけです。
不動産取引においてこれを心理的瑕疵と言います。
通常、心理的瑕疵がある物件としてよく言われるのが事故物件で、その物件で前居住者が死亡した経歴のあるものを指しますが、ただすべてが事故物件とは言い切れないのです。
たとえばそこで事件があり居住者が悲惨な最期を遂げたのであれば、事故物件となりますが、自然死や早期発見の孤独死などは事故物件とみなされないケースもあります。
事故物件の定義として、国土交通省のガイドラインでは自然死や不慮の事故死以外の死、あるいは特殊清掃が必要となる死とされています。
この定義に沿って考えると、他殺や自殺のあった物件、そして自然死であっても特殊清掃が必要となった物件は事故物件となります。
逆に、在宅看取りのケースはこの定義で見ると事故物件とはみなされません。
しかし、すべての方がそれを気にしないわけではありません。
なかには在宅での自然死であっても嫌悪感を示す買主もいて、購入後にその事実を知り、損害賠償を請求するといったケースも決して珍しくはないのです。
また実際は単なる自然死があった物件であっても、噂などによる風評被害があれば、事前に買主へ知らせておかなければならず、これも心理的瑕疵に当たるケースがあります。
このように売主は買主に対して、心理的瑕疵の内容を事前に伝えておかなければならず、これを告知義務と言います。
在宅看取りは事故物件?告知義務が必要だと判断されるケース
宅地建物取引業法において告知義務のある不動産は4種類あり、これらを買主に伝えずに契約した場合、契約不適合責任として契約破棄や損害賠償の恐れがあります。
①物理的瑕疵
建物の場合は雨漏りや設備の故障など、土地に関しては汚染や地中障害物の存在などです。
②環境的瑕疵
物件の周辺に工場や火葬場、刑務所などいわゆる嫌悪施設と呼ばれるものがある場合です。
③法的瑕疵
建築基準法や都市計画法、消防法によって何らかの規制や制限がかかっていたり、違法建築物となっていたりする場合も告知義務があります。
④心理的瑕疵
殺人や死亡事故などがあった物件で、そこで生活するうえで嫌悪感や不快感を抱くものが該当します。
在宅看取りでも告知義務があると判断されるケース
本来であれば在宅看取りがあった物件ではこの心理的瑕疵はないのですが、それでも告知義務があると判断されるケースにはどういったものがあるのかをみていきましょう。
たとえば自宅で亡くなったケースであっても、遺体の発見までに時間がかかった場合は、まず事件性が疑われ、警察による調査がおこなわれます。
このときもし事件性があれば事故物件となり、事件性がないと判断されても警察が出入りすれば風評被害の恐れもあり、この場合には告知義務が発生します。
また自然死や孤独死であっても発見が遅れ、壁や床にしみや汚れが残ったり、異臭が染みついていたりすれば特殊清掃が必要となり、こちらも告知義務が生じるわけです。
このように在宅看取りであっても、場合によっては告知義務の発生が考えられます。
また買主によっても心理的瑕疵を気にする方としない方がいるため、その基準は明確ではありません。
ただそういった曖昧な部分に関しては、のちのトラブルを防ぐ意味でもなるべく買主に伝え、同意を得たうえで売買契約の締結をおこなってください。
在宅看取りは事故物件?影響を最小限に抑える方法
現在は医療機関で亡くなる方がほとんどですが、今から40年以上前には、自宅で看取られる方のほうが多かった時代がありました。
その後医療の技術が進み、それまでは助からなかった病気も治療ができるようになってくると、今度は医療機関で最期を迎える方が増えてきたのです。
しかし近年、また以前のように自宅で自身の生涯を閉じたいと望む方が増えてきて、この先もしかすると在宅看取りが当たり前となる時代が戻ってくるかもしれません。
ただそこにはどうしても人が亡くなったといった忌避原因があり、それが買主の心理的瑕疵を生み出し、売却へ大きく影響してくるわけです。
一般的に事故物件とみなされた物件は、相場と比べ約10~30%も売却価格が低くなってしまうため、売主としてはなんとかその影響を最小限に抑えたいでしょう。
そこで、在宅看取りがあった物件へのそうした影響を抑える方法をいくつか挙げていきます。
まずは警察の検視を受けないといったものがあります。
この検死は死因を調べる際に警察がおこなうもので、警察が扱う理由としては事件性があった場合に、殺人としての捜査が必要となってくるためです。
ただ在宅でかかりつけの医者からの医療サービスを受けている場合は、その主治医によって死後24時間以内に死亡確認が取れたケースに限り、検死の必要性はなくなります。
これは医師が常に診察をおこなっているため、その死亡原因や病名に関しては明確となっている場合が多く、あえて警察が死因を調べなくても良いからです。
しかし検死が決まってしまえば、それを止めるのは不可能となるため、緊急時に医師や看護師と連絡が取れるような態勢にしておかなければいけません。
次に在宅での病死後、まだ日が浅いうちにその物件を売却するのであれば、そこで在宅看取りがあった旨を買主に告知しておくと良いでしょう。
通常、そこで人が亡くなった物件は、瑕疵が下がるまで数か月置いておきますが、すぐの売却を希望するのであれば、病死の事実や死因について伝えておくとトラブルが防げます。
そして在宅看取りをたとえば介護施設など、自宅以外の場所でおこなうといった方法も検討しておくと、いざそうなった場合の物件への影響を最小限に抑えられます。
実際、介護施設での看取りは増える傾向にあり、そのほうが本人も病院よりは住み慣れた安心できる環境下で最期を迎えられるわけです。
まとめ
家族のなかで誰かが亡くなるとき、その家族とすればできる限り本人の意思を尊重してあげたいものです。
もしその本人が自宅で最期を迎えたいと望み、家族やかかりつけの医師もそれに同意するなどすれば、その環境は整います。
ただその物件が事故物件とみなされる恐れもあるため、その扱いには細心の注意を払ってください。
株式会社Home Style スタッフブログ編集部
京都市右京区西院に店舗を構え不動産仲介や不動産買取を行っている株式会社Home Styleです。京都市右京区・中京区を中心に京都全域の戸建、土地、マンション等の物件を多数ご紹介しています。今後も不動産や相続に関する記事を主にご提供します。